Book Title: Vaisesika Dignaga Author(s): Publisher: View full book textPage 6
________________ 28 インド学試論集1 結果とは,同一の知覚現象を異った側面から見た区別で,本来両者は別々のものではない というのが, Dignaga の見解であるが,彼は此の見解に基いて、知識根拠とそれによっ て生ぜられる結果とを別のものとなす Nyaya 学派の説を批判している。即ちNS, I, i, 4 に知覚が「確定性をもつ」(yyavasayatmaka) 知識であると定義されているので, Dignaga は此の語を取り上げて、若し知識根拠としての知覚が既に確定性をもつならば,そ れとは別の結果を新たに生ずる必要はないと定義の欠陥を指摘する。之に対して Nyaya 学派は,先ず知識根拠によって、対象の限定要素たる普遍等に関する確定性をもった知識 が得られ,次に此の限定要素によって限定された実体等の認識が生じたとき,それが結果 である,という答釈を用意する。此処に Vaisesika 批判に当って再説された Dignaga の語は、此の答釈に対して向けられたものである。知識根拠とそれによって生ぜられた結 果とが,夫くかかわる対象を異にするという此の見解は, khadira 樹を目がけて振り下 された斧が,結果としては palasa 樹を切断していると言うにも等しい,不合理極まりな いものであると、其の個処で Dignaga は述べているのである。) (未完) 附記 本稿は大倉山学院紀要に掲載を予定されていたが、同紀要の刊行が遅延しているの で、関係者の諒解を得て原稿の返却を受け、本誌に分載することとなった。他の拙論に 当初の予定を註記したので,ここに変更の事情を附記する次第である。 1) Pramanasamuccaya 第1章に於ける他学派批判については, 北川秀則「正理学沢 の現量説に対する陳那の批判」(名古屋大学文学部研究論集,哲学XXI), 拙稿「『論軌』 の知覚説に対するディグナーガの批判」(宗教研究 165号),同 'Dignaga's Criticism of the Samkhya Theory of Perception'(大阪府立大学紀要 Ser.C, vol.8), 同 'Dignaga's Criticism of the Mimamsaka Theory of Perception' (EIVE OF 究第9巻第2号)参照。なお、Vaisesika 批判の部分に引用されたVaisesika 学説は、 宮坂宥勝「集量論註・流に伝えるヴァーイシェーシカ学派の現量論」(密教文化第34号) の中に抄訳解説されている。筆者は此の論文に負うところありながら、見解を同じく し得の個処も多いので,本稿に於いて重複を敢て避けなかった。 2) Prasastapadabhasya (PBh), Chowkhamba ed., p. 552 ff. 3) [Ab] の解説参照。 4) 此の点についてはCD] の解説に詳論する。 5) K: Tshad-ma kun-las btus-paui hgrel-pa (Pramanasamuccayavstti), Kanakavarman 訳,北京版 影印本 Vol. 130, No.5702. V: ditto, Vasudhararaksita 訳,デルゲ版 東北目録 No. 4204, 北京版 影印本 Vol. 130, No. 5701. J: Jinendrabuddhi, Visalamalavati Pramanasamuccayatika, デルゲ版 東北目録 No. 4268, 北京版 影印本 Vol. 139, No. 5766. V, J は先にデルゲ版の葉数行数を示 し,その後に北京版のを括弧内に示す。Kārika の部分は此の外に Kk : KanakavarPage Navigation
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