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________________ 東方學報 六一六 のが難しい事柄を離れ、諸の衆生における各々の願望の相違に從って、がんじがらめの隨眠(煩悩)の狀態のなかで、 その諸煩悩を捨てさせる為に、佛法の要點を宣揚される。(以下略) まとめると次のようになろうかと思う。ディグナーガによれば、佛は事物を単一であるとも異なるとも全くの非實在であ るとも說かなかった。しかし、このことは佛が事物の単一性等を認めていたことを意味しない。佛の說く內容には、しば しば甚深の意味を秘めたもの(密意)があるが、 事物の単一性等もこの密意にほかならない。 事物は本來これこれと言葉 で表現しうる性質のものではなく、假象にすぎないから。では、なぜ佛はそのようにはっきりと說かなかったのか。ディ グナーガは、まさにこの「說かなかった」という點に、方便によって衆生を濟度に導こうとの佛の意圖、佛の對機說法、 をみてとるのである。 方便の強調によって衆生のJ度を良く論法は、もちろんディグナーガ獨自のものではなく、より廣く大乘佛教一般の立 場からのものであろう(例えば、唯識家ディグナーガと般若經のつながりは、彼の『佛母般若波羅蜜多圓集要義論』Prajmaparamitapindarthasamgraha からも明らかである)。部分と全體という觀點からみるとき、『取因假設論』の特徴は、 假象の理論に「全體」を位置付けた點、コンパクトなテキストのうちにも単なる認識論を越えたところで佛の方便との關 連を示した點にあろう。このような彼の論述は部分と全體の議論を歴史的に俯瞰するとき興味ぶかい。なぜなら、彼以降 になると理論の細分化・複雑化のために、外界否定による唯識性の論證といった教義上の關係はともかくとして、全體の 否定という哲學理論が宗教的救濟を說く佛教本來の立場とどのようなつながりがあるのか、にわかに見極め難くなって行 くからである。 3 ダルマキールティの指摘する「三つの矛盾」
SR No.269522
Book TitleBhava And Svabhava 01
Original Sutra AuthorN/A
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Publication Year
Total Pages30
LanguageEnglish
ClassificationArticle
File Size3 MB
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