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Kamalaśila PE Nyāyabindu pūrvapakşesamkşipta
一現量章のテキストと和訳――
Hiromasa Tosaki
まえがき
本書(チベット訳のみ現存) は Dharmakirti の Nyayabindu によって斥けられた前主張 (purvapaksa) を集録したもの (samksipta)である。これがKamalasila の真作であること はほぼ間違いないであろう。このことはすでに拙論「蓮華戒造 Nyayabindupurvapaksesamksipta について」(印仏研 VIII-1, 昭和35, pp. 140-141) に簡単に述べたのであるが、いまこ の和訳において,それを補う意味で TS (TSP) との内容上の一致を注記することに努めた。 本書と TS (TSP)とは内容的にほとんど一致するとみてよいであろう。とくにそれは、本 和訳の範囲に限っていえば,Caraka 等の 他の量、説の記述 (I-1-i-B) において顕著であ る。本書の著者は TS を学習し熟知していたに違いない。おそらく, Kamalasila は TSの 注釈 (TSP)を著わした経験を活用して本書を著わしたのであろう。
現量章の内容はつぎのようである。
1 現量 . 1,現量論は四つの誤った見解を破すためである
i 四つの誤った見解 A 誤った見解の種類 B 軍の数についての誤った見解 C 現量の本質についての誤った見解 (a) 本質について (b) 種類について D 対象についての誤った見解 E 量果についての誤った見解
現量論はこれら誤った見解を破すためである 2経論に根拠を求める
i 量の数と対象について